ぬりたくるようなものだ。それから、この巨人にしてもだ! 上品に出来たギリシャ神話の筋の中へ、君はどうしてあんな大きな、不釣合なものを無理に持込んで来るんだろうねえ? 一体、ギリシャ神話の傾向としては、大きく言いたいところも、その全体に行渡った上品さによって、度を越えないように遠慮してあるという風なんだ。』
『僕はその巨人を、自分の思った通りに話しただけです、』学生は少々腹を立てて答えた。『そして、おじさん、もしもあなたがギリシャ神話をつくり変えるために必要なような心構えになって、それらに臨んでさえ下されば、古代のギリシャ人だけに独占権があるわけではなく、現代のアメリカ人にだって、やって見る権利があるということが、すぐお分りになるでしょう。ギリシャ神話は全世界の、そしてまた、すべての時代を通じての、共有物です。古代の詩人は、それらを好きなようにつくり変えて、彼等の手でどうにでもしました。それが僕の手にかかって、同じように、自由になってはいけないというわけがあるでしょうか?』
プリングル氏は微笑を抑えることが出来なかった。
『それにまた、』とユースタスはつづけた、『古典の型の中へ、少しでも温い心を、情熱か愛情を、或は人間又は神の道徳を、注込《つぎこ》んだら、その瞬間に、もう前のものとはまるで違ったものになってしまいます。僕の見るところでは、ギリシャ人は、これらの伝説(それはずうっと古くから人類に伝わって来たものです)を受けついで、いかにもそれに不滅の美しさを持った形を与えましたが、しかし一方からいえば、その形が冷たく、且つ情味のないものであったがために、ずうっと後世に亙《わた》って、計り知れないほどの害毒を流したのです。』
『君は、きっと、それを救うために生れて来たというんだろう、』とプリングル氏は言って、からからと笑い出した。『まあ、いいや、これからもつづけてやるんだね。しかし、忠告しとくがね、決して君の滑稽な作りかえを文章に書かないことだ。そして、次の仕事として、アポロウの伝説のうちのどれかを手がけて見たらどうかね?』
『ああ、おじさん、それはちょっと出来そうもないから、そうおっしゃるんでしょう、』学生はちょっと考え込んだのち言った、『そして、成程ちょっと考えると、野蛮《ゴシック》趣味のアポロウなんて、随分おかしな気がします。しかし、僕はおじさんの発案について十分
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