なっている大変いい、美しいものを知っているんですよ!』
『おう、聞かして下さい、それが何だか聞かして下さい!』と彼等は叫びました。
『訊いてはいけません、』とホウプは、薔薇色の口に指をあてて言いました。『しかし、万一あなた方がこの世にいるうちにそんなことがなくても、気を落してはいけません。わたしの約束を信じて下さい、それは本当なんですから。』
『私達はあなたを信じます!』とエピミーシウスとパンドーラとは、二人一しょに叫びました。
 そして彼等は本当にホウプを信じました。いや、彼等ばかりでなく、その後この世に生れ出た人は、誰でもその通りホウプを信じました。そして、実際のことをいうと――(たしかに彼女がそんなことをしたのは、とても悪かったには違いないにしても)――僕は馬鹿なパンドーラが箱の中をのぞいて見たということを喜ばずにはいられないのです。そりゃもう――たしかに――「わざわい」が今もなお世の中を飛び廻っていて、減《へ》るどころか、却って数もふえて、それが大変いやな小悪魔達で、お尻にとても毒のある螫《はり》を持っていることも知っています。僕は今までにも彼等に苦しめられたし、これからも年を取って行くにつれて、もっと苦しめられることは覚悟しています。しかしその代りに、この美しい、明るい、ホウプの可愛らしい姿があるじゃありませんか! われわれは一体「希望《ホウプ》」なしで、どうすることが出来ましょう? ホウプは世の中を高尚にしてくれます、ホウプは世の中を常に新しくしてくれます。たとえ世の中が、どんなに明るく見えた時でも、それがただ、もっと後にやって来る限りない幸福の影に過ぎないということを、ホウプは教えてくれます!
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     タングルウッドの遊戯室
       ――話のあとで――

『プリムロウズ、』とユースタスは、彼女の耳をつねりながら訊いた、『どう、この小さなパンドーラって子は気に入ったかい? 彼女はまるで君そっくりだと思わない? しかし君なら、その箱をあけるのに、そんなにぐずぐずしてやしないだろうねえ。』
『もしあけていたら、あたしそのわるさのために、随分ひどい目にあっていたでしょう。だって、蓋をあけると、真先《まっさき》にひょいと飛び出して来るのは、「わざわい」の姿をしたユースタス・ブライトさんだったでしょうからねえ、』プリムロウズは、手きびしく
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