でも何だかことわりにくくなってしまうような、一種の愉快な魅力が、その調子の中に含まれていました。パンドーラの心は、その箱の中から聞えて来る一語々々に、知らず識らず軽くなっていました。エピミーシウスもまた、まだ隅の方にはいましたが、半分こっちを向いて、前よりもいくらか機嫌がよくなっている様子でした。
『ねえエピミーシウス、』とパンドーラは叫びました、『あんたこの小さな声を聞いて?』
『うん、たしかに聞いたよ、』と彼は答えましたが、まだあまりいい機嫌ではありませんでした。『で、それがどうしたんだい?』
『あたしもう一度、蓋をあけたもんでしょうか?』とパンドーラは訊きました。
『そりゃ君の好きなようにするさ、』とエピミーシウスは言いました。『君はもう大変な悪いことをしちゃったんだから、その上もうちょっぴり悪いことをしたっていいだろうよ。君が世間にまき散らしたような「わざわい」の大群の中へ、もう一匹ほかのやつが出て来たところで、別に対したことはありっこないさ。』
『あんた、もう少し親切に口を利いてくれたっていいでしょう!』とパンドーラは、目を拭きながら言いました。
『ああ、しようのない児だねえ!』と箱の中の小さな声は、ずるそうな、笑い出しそうな調子で言いました。『あの児は自分でも、わたしを見たくてならないのは分っているんですよ。さあ、パンドーラさん、蓋をあけて下さい。わたしはあなたを慰めてあげようと思って、大変気が急《せ》いているんです。ほんのちょっとわたしにいい空気を吸わせて下さい。そうすれば、あなたが考えているほど、そうひどく悲観したものでもないということが分るでしょう。』
『エピミーシウス、』とパンドーラは叫びました、『何だってかまわないから、あたし箱をあけて見るわ!』
『じゃ、蓋が大変重そうだから、僕が手伝って上げよう!』とエピミーシウスは叫んで、部屋の向うから駆けて来ました。
こうして、双方承知で、二人の子供はまた蓋をあけました。すると、明るい、にこにこした小さな人が飛び出して来て、部屋の中を舞って歩きましたが、彼女の行くところは何処でも明るく見えました。君達は鏡のかけらで日光を反射させて、暗いところでちらちらさせて見たことはありませんか? とにかく、この妖精のような見知らぬ人が、薄暗い家の中を愉快そうに飛び廻る有様は、そんな風に見えました。彼女がエピミーシウス
前へ
次へ
全154ページ中74ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ホーソーン ナサニエル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング