なことでもあると、彼女たちは二人とも云い合せたように、声をくもらせてこう云うのでした。
「まあ、そんなになるまでには、さぞかし、そのかたは辛い思いをなさったことでしょうねエ!」
 ただそれだけのことでした。愛情の悲劇にたいしては、彼女たちは、ただ同情するだけで、そうした人たちが犯罪《つみ》を犯した時でさえ、義憤を感じるようなことは決してありませんでした。
 ところがある秋のことでした。狩猟に招かれて来ていたド・グラデルという若い男が、その娘をつれて逃げてしまいました。
 ド・サンテーズさんは、何事もなかったように平然とした容子をしておりました。ところが、ある朝、何匹もの犬にとり囲まれて、その犬小舎で首を吊って死んでいたのです。
 その息子さんも、一千八百四十一年になさった旅の途次、オペラ座の歌姫にだまされたあげく、巴里《パリ》の客舎で、同じような死に方をして果てました。
 その人は十二になる男の子と、私の母の妹である女を寡婦として残して逝かれました。良人に先立たれた叔母は、その子供を連れて、ペルティヨンの領地にあった私の父の家へ来て暮しておりました。私はその頃十七でした。
 この少年サ
前へ 次へ
全15ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
モーパッサン ギ・ド の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング