たって果てたのです。変なことだとお考えになるでしょうね。
まったく、一風変った人たちでした。云わば気狂《きちが》いだったのですね。だが、これは愛すべき気狂い、恋の気狂いであったとも申せるのです。この一家の者は、父から子へ、子からまたその子へと、皆な親ゆずりの激しい情熱をもっていて、全身《からだじゅう》がその熱でもえ、それがこの人たちを駆って、とんでもない熱狂的なことをさせたり、狂気の沙汰とも云うべき献身的なことをやらせたり、果ては犯罪をさえ犯させるのでした。この人たちにとっては、それ[#「それ」に傍点]は、ある魂にみる信仰心と同じで、燃えるように強かったのです。トラピスト教会の修道士になるような人たちの性質は、サロンなどに出入りする浮気な人たちとは同日に云えないものがあるでしょう。親類の間にはこんな言葉がありました、――「サンテーズ家の人のように恋をする。」一瞥《ひとめ》見るだけで、分ってしまうのです。彼らはみんな髪の毛がうずを捲いていて、額にひくく垂れ下がり、髭は縮れ、眼がそれはそれは大きくて、その眼で射るように視《み》られると、何がどうということもなしに、相手の胸は乱れるのでした
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