っていた。彼らはこうして、毎日夕がたになると、身心ともに疲れはてて館へ帰って来るのだった。
 晩餐をすますと、彼らは、広間に集って、たいして興もなげにロト遊びをしていた。戸外《そと》では風が鎧戸に吹きつけて騒々しい音をたて、また古めかしい風見を、独楽のように、からから※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]していた。そこで一同は、よく本などにあるように、何かかわった話をしてみたらどうだと云いだした。が、ねッから面白い話も出なかった。男の猟人たちは射撃の冒険談や兎を殺した話などをした。女連のほうも頻りに頭を悩ましているのだったが、千一夜物語のシュヘラザアデの想像はとうてい彼女たちの頭には浮んで来なかった。
 この遊びももう止めにしようとしていた時である、先刻から、未婚の女でとおして来た年老いた伯母の手を弄ぶともなく弄んでいた一人の若い女が、金色の頭髪《かみのけ》でこしらえた小さな指環にふと目をとめた。その時までにも何遍となく見たことはあったのだが、別に気にとめて考えてみたこともなかったのである。
 彼女はそこでその指環を静かに指のまわりに※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]しなが
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