自殺を買う話
橋本五郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)真面目にして且《かつ》愛嬌あり

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|間《けん》の書架

[#]:入力者注 主に外字の注記や傍点の位置の指定
(例)[#地付き](一九二七年五月号)
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     1

 ――妻らしき妻を求む。十八歳以上二十七八歳までの、真面目にして且《かつ》愛嬌あり、常識を有し、一生夫に忠実にして、血統正しく上品なる婦人ならば、貧富を問わず、妻として迎え優遇す。
 当方三十一歳、身長五尺三寸、体重十三貫二百匁、強健にして元気旺盛、職業薬業、趣味読書旅行観劇其他、新時代の流行物。禁酒禁煙。将来の目的、都会生活を営み外国取引開始。
 保護者の許可を経て、最近の写真、履歴書、本人自筆の趣味希望等、親展書にて申込ありたし――。
 そんな広告に微笑しながら、新聞の案内広告を見ていた私は、その雑件と云う条《くだり》に至って、思わず新聞をとり直した。
 ――自殺買いたし、委細面談。但し善良なる青年のものに限る。××町野々村――。
 私が驚いたのは、その要件の奇抜よりも、該広
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