至るであろうならば、それらの姓名を天下に公表するべく自分は一時も躊躇しないであろう――おそらくそれらの罪の名は全欧洲を震駭するでもあろうが。
『一口にいえば、当時――千九百――年――巴里《パリー》には、政治経済界に勃発した奇々怪々な疑獄事件に関連して有名な恐慌がやって来たのだ。仏蘭西《フランス》を代表する幾多の巨頭の名誉と経歴とは全く危機に瀕していた。そこへもし大西洋の彼方から、あのカラタール氏が爆弾のように飛込んで来ようものなら、彼等巨頭連の存在は一たまりもなく将棊《しょうぎ》倒しにされてしまうのだ。しかもその爆弾は今まさに南|亜米利加《アメリカ》から、巴里《パリー》の空|目蒐《めが》けて飛翔の準備中であるという警鐘は乱打されているのだ。そこで、どうしてもカラタール氏をして仏蘭西《フランス》の地を踏ませない策略を講じなければならないこととなった。そこで彼等は組合《シンジケート》をつくって危急に当ろうと決心した。組合は無限の金力を動かすことが出来た。この巨大な金力を自由にふるって、カラタール氏の入国を絶対にはばむことの出来る人物を彼等は求め始めた。人物、それは独創力に富んだ、果断な、そ
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