ド・ビーチャーの額縁なしの肖像画へ目を移した。それから壁へ目をやった。無論、君がそう云う風に目を移していった目的はハッキリしているさ。君はその肖像画を額縁に入れたら、壁のむき出しになっている所へかけて、ゴルドンの肖像画とつり合いのとれるようにしようと思っていたんだろう」
「実に君は気味の悪いように僕の気持ちをよく見といたんだね」
 私は叫んだ。
「迷うことなくハッキリ分かったよ。――いいかね、それから君の考えはまたビーチャーに戻って来た。そして君はビーチャーの性格を研究でもするかのように、じっと熱心にそれを見詰め出したろう。がやがて君は目をすぼめるのをやめにした。しかし君は依然としてその肖像画を眺めつづけていたが、その時の君の顔は何かものを考え耽ってる顔つきだった。――君はビーチャーの生涯におきたいろいろな出来事を思い起していたに違いないんだ。僕には、君が、ビーチャーがあの革命戦争の時、北方の利益のために企てた使命のことを考えていたと云うことが、確かに分かってるんだよ。なぜなら君はいつだったか、彼が我々国民の動乱を蒙らされたと云うことについて、ひどく慷慨《こうがい》していたことのあった
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