びながら椅子に腰をおろすと、めちゃくちゃなことを口走り始めて、どうにも手がつけられないんです。――で、私があなたの所へ伺ったのも、実は彼の意志なんです。もちろん、こんな事件は、すぐ解決のつくことだろうと私は思っているんですが。――事実、ブレシントン氏は非常な重大問題か何かのように思っているらしいんですが、しかし本当はごく単純な出来事なんですからね。――そんなわけで、もう今からすぐ、私の馬車で私と一しょに来ていただけますようですと、よしその事件の解決はすぐつかないにしても、彼は平静にして下さることが出来ると思うんですが……」
シャーロック・ホームズは、彼の長い話を熱心にきいていた。私はそのホームズの様子を見て、彼の心のうちにその事件に対して興味が湧いて来たらしいことを見てとった。彼の顔の表情は少しも変りはしなかったが、彼の目蓋は重く彼の上に垂れさがり、彼の唇からは、あたかもその医者の話す一つ一つの珍妙な物語を、更に不思議にするかのように、濃い煙草の煙がもくもくと吐かれていた。――が、やがて私たちのその訪問客が話を終ると、ホームズはものも云わずに突然立ち上った。そして私に私の帽子を手渡し
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