でかち得ておいた評判や、また二三の成功などのために、私はすごい勢《いきおい》ではやり出しました。そしてこの一二年の間に、私は彼をすっかりお金持ちにしてやってしまったのです。
 ホームズさん、私の今日まではこんな風な生涯だったのです。そしてまたブレシントンとの関係も今お話したようなわけだったのです。――そこでこれからお話しなければならないのは、今夜の出来ごとなのですが……
 ちょうど二三週間前のことでした。ブレシントン氏が突然に、私の所へやって参りましたが、彼は何だか、変にイライラしているらしいような様子でした。そして彼はしきりに、西部地方で起きた盗難事件のことを話し、滑稽なほど昂奮して、どうしても私たちも二三日のうちに、窓や扉へ丈夫な閂《かんぬき》をつけなくてはならないと主張するのでした。そうして、それからと云うものは一週間の間、毎日休みなく窓から外をのぞいては見るのです。そして彼が昼飯をとる前には必ずその辺をブラブラして来る恒例の散歩もやめてしまって、その奇妙な昂奮状態にいるのでした。――こうした彼の様子から、私は、彼が何かの恐迫観念に捕われているのに相違ない、と感づきました。しかし
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