、まったく無益のことであった。かれらはこの船の上には呪いがあると信じ、そうして、たしかにそうであると決定してしまったのである。
船長は午後の約三十分、後甲板へ出てくる以外は、終日《しゅうじつ》自分の部屋にとじこもっていた。わたしは彼が後甲板で、きのう、かの幻影が現われた場所をじっと見入っているのを見たので、またどうかするのではないかとじゅうぶん覚悟していたが、別に何事も起こらなかった。私はそのそば近くに立っていたが、彼はかつて私を見る様子もなかった。
機関長がいつものごとくに祈祷をした。捕鯨船のうちで、イングランド教会の祈祷書が常に用いられるのはおかしなことである。しかも高級船員のうちにも、普通船員のうちにも、けっしてイングランド教会の者はいないのである。われわれは天主教徒《ローマン・カトリック》か長老教会派《プレスビテリアンス》のもので、天主教徒が多数を占めている。そこで、どちらの信徒にも異なる宗派の儀式が用いられているのであるから、いずれも自分たちの儀式がいいなどと苦情を言うことも出来ない。そうして、そのやりかたが気に入ったものであれば、かれらは熱心に傾聴するのである。
かが
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