来てしまっていた。ウィリアムソンと云うのが、その借り主だと云うことであったが、それはなかなか尊敬するに足る、もう年長の老紳士だと云うのであった。鄭重な管理人にもう、何も云うことはないので、ひどく困った様子をしていたが、たしかにこのお客様の要件と云うのは、その管理者にとって、口にしがたいことには相違ないことであった。
 その夜私は、これだけの長い報告を、シャーロック・ホームズ君のところに齎《もたら》した。私は大変価値ある、そして多少の賞讃さえも、期待したことであったが、しかしそうした言葉は彼の口からは出て来なかった。それどころか、彼が私のやって来たこと、気がつかずに来たことに対する批評の時は、彼の峻厳な顔は、いよいよ嶮《けわ》しく変ってしまった。
「いや、ワトソン君、――君はまずその、隠れ場所が第一に間違ってるよ」
 彼は云った。
「そりゃ君は、生籬の蔭にかくれるべきだった。そうすればその目的の人物を間近くで見ることが出来たわけじゃないかね。君も何百|碼《ヤード》と云うものを離れて見たので、あの娘さんのスミス嬢以下の報告っきり出来ないじゃないか、あの女は自分が知らない者だろうと云っていた
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