ッハ瀑布の、断崖の途中の、窪地に横わっていた時に、お目に止まって、いろいろと御配慮を煩わした時は、まさかこうしてまたお目にかかる光栄を得るものとは思いませんでしたよ」
しかし大佐は依然として、憑かれた者のように、ホームズを見つめ続けた。
「狡獪極まる悪魔め! 狡獪者の悪魔め!」
大佐は結局こうした言葉の外は何も云えなかった。
「ああ諸君にまだ紹介しなかったが、この方は、セバスチャン・モラン大佐と仰るのだ」
ホームズは改まって云った。
「以前は皇帝の印度《いんど》軍に居た方で、わが東方帝国の生んだ、名誉ある最大の名射手なのです。――ね、大佐、あなたの虎嚢は、依然として天下無双でしょう。ねきっとそうでしょう?」
しかしこの猛激な老人は、依然として言葉は無く、ただ私の友人の顔を発矢《はっし》と睥みつけている。その猛き眼光、剛《こわ》い髭、――さながらに猛虎の風貌をも思わしめるものであった。
「僕の簡単なトリックで、こうした老練な猟師を瞞すことが出来たと云うのは全く不思議でならない」
ホームズは更に言葉を続けた。
「君には何も珍らしくもないことに相違ないが、君は木の下に仔山羊《こひつ
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