、僕を呪い狙っているのであった。この連中はいずれも、恐るべき人間共だからね。その中の誰かは、たしかに僕を仕止め得たかもしれなかった。しかしまた、一面から云えば、もう全社会が僕の死を信ずるようになれば、この連中とても自儘になって、その行動も現《あらわ》になって来る、――そうすると僕はいずれ早晩彼等を撃滅することが出来ることになる。こうしてから僕は自分が、たしかにまだ現世に踏み止まっていると云うことを世間に発表することにする。僕は実際、人間の頭と云うものも、実に敏感に働くものだと思うが、僕はこれだけのことを、モリアーティ教授が、転落してライヘンバッハ瀑布の水底に、達するまでの間に考えついてしまったのだ。
それから僕は起き上って、背後の岩壁を検《しら》べてみた。僕が数ヶ月の後に、実に興味深く読んだ、君のこの事件に対する絵を見るような記録には、その岩壁は、切り立てたようであったと記されてあったが、しかしあれは必ずしも、文字通りには正しくはなかったのだ。二三ヶ処、足掛りになるようなものもあったし、また、窪地さえもあったのだ。確にその高さは大したもので、とても一気に上らるべきものでもなかったし、
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