ね。しかしランプではどうしたって穴をこがさずにはつけられないよ。しかもこいつは右側がこげている。そこで僕はこの男が左利きだと推察したんだ。――君のパイプをランプの所へ持ってってみたまえ。右の手でだよ、すると自然にパイプの左側が穴にあたるようになるから。けれどその反対にすると、それと同じようにゃいかないから。つまりこれを始終やってたんだね。――それからこの男は琥珀の所を噛みつぶしている。それは体格のいい勢力家《せいりょくか》がよくやるし、また歯の丈夫な人がよくやることだよ。――オット、奴《やっこ》さんたしかに階段を登って来るらしいぞ、さあこうなるとパイプの詮議立てなんかしているより面白くなるて……」
と云っているとほどなく、私達の部屋の入口が開かれた。そして背の高い若い男が這入って来た。彼は暗い灰色の品《しな》のよい上品な服を着て、褐色の中折帽《なかおれぼう》を手に持っていた。実際はそれより二三年は年をとっていたのだが、私は卅歳《さんじっさい》ぐらいと見当をつけた。
「ごめん下さい」
と彼は、まごつきながら云った。
「ノックしなければなりませんでしたでしょうか? ――いえ、そりア無論私
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