あるようでしたら、どうかおききになって下さい。けれど、いずれにせよどうか早く、私はどうしたらいいか、それを云って下さい。私はこの不幸に、もう堪《た》えられないんです」
ホームズと私とは、この驚くべき話を、非常な興味を以ってきいた。それは話し手が激しい感情に捕われていたため、早口に順序もかまわずに話されたのだったけれど。――ホームズはしばらくの間無言のまま、額《ひたい》に両手をあてて、じっと考えに沈みながら坐っていた。が、やがて彼は云った。
「その窓で見たのは、確かに人間の顔だと断言出来ますね」
「ところが、それを私が見た時はいつも、かなり離れていたので、確かにそうだと云うことは出来ないんです」
「けれどあなたはそれを見ていやな気がしたとおっしゃいましたね」
「うす気味の悪《わ》るい色をして、硬《こわ》ばった顔をしていました。そして私が近寄って行くと、急に、かくれてしまうのでした」
「それはあなたの奥さんが、あなたに百|磅《ポンド》請求してから、どのくらい後でしたか?」
「二ヶ月ばかり」
「あなたは、奥さんの最初の檀那さんの写真を見た事がありますか?」
「いいえ。――彼女の初めての夫が
前へ
次へ
全47ページ中31ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドイル アーサー・コナン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング