られてあったと。二人の女どもはこの点については、とてもよくはっきりしていた。彼の女たちは早速、医者と駐在所に知らせた。それから馬丁と厩番の少年の手を藉《か》りて、夫人をその室に移したのであった。主人夫婦はたしかにその夜は寝室に入ったに相違なかった。婦人のほうは日常の着物を着ていたが、しかし主人の方は、寝衣《ドレッシングガウン》に、寛服《ナイトガウン》を重ねていたのであった。書斎の中は全く一物も動かされた形跡はなかった。その女たちの見て知っているところでは、その夫妻の間に、喧嘩と云ったようなもののあったためしも無いようであったと。とても仲のよい夫婦と見られていたのであった。
以上のことは女中たちの陳述の大要であるが、検察官マーティンに答えた言葉では、扉《ドア》と云う扉《ドア》は全部、内部からしっかりと締め下されてあって、誰も家の中から遁げ出したはずはないと云うことであった。それからホームズの問いに対しては、彼の女たちは、一番上の自分たちの室を飛び出した時に、火薬の臭をかいだと云うのであった。
「これはなかなか慎重にかからなければならない大問題ですな」
ホームズは仕事仲間に云った。
「
前へ
次へ
全58ページ中30ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドイル アーサー・コナン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング