なくてはならない。もしその手紙の中にかくされた意味があるなら、僕はそれをつかみ出すことが出来る確信があった。そうしてそれから一時間の間、僕は薄暗《うすやみ》の中に考えながら坐っていた。やがて一人の女中が泣きながらランプを持って来た。そしてその女中と入れ交《ちが》いに、友達のトレヴォは真蒼な顔色をして、しかし落ついて、今、君が膝の上にのせているその書類をつかんでやって来た。彼は僕と向い合って腰をおろした。そしてテエブルの端のほうへランプを引き寄せて、僕に、君が見ている、その灰色の半截紙に書いてある短い手記を手渡した。
[#ここから1字下げ]
――ロンドンにおける計画の準備は着々進行しつつあり。主任看視者ハドソンは、蠅捕紙と貴下の雄鳥《おす》の雉の命を保管するための命令を受けたることを信ず。――
[#ここで字下げ終わり]
それにはこう書いてあった。
実を云えばこれを初めて読んだ時、僕も、今君がしていると同じような、合点の行かなそうなまごついた顔をしたんだよ。が、僕はよく気をつけてもう一度読み返したんだ。それはたしかに僕が考えたように、その文字のつながりに何か第二の意味が隠されているに相違なかったんだ。でなければ、『蠅捕紙』だとか『雄鳥《おす》の雉』だとか云う字に、何か前からきめてある特別な意味があるのだろうか?――とそう思ったんだね。だが、そう云う意味があったとしてもだね、そう云う意味はどんな風にでも勝手にきめられるもので、従ってどのみち想像するなんてことは出来ないものなんだ。その上僕はそう信じたくなかったんだ。それからまた『ハドソン』と云う文字が現れている所から見て、その手紙の主意も、また、それを出したのはハドソンよりもむしろベドウスであると云うことも、分かるような気がした。僕は逆に読んでいってみた。けれども字のつながりが、『雄鳥《おす》の雉の命』と云う所でつかえてしまった。次に一つおきに読んでみた。けれどもそれでもやはりなんの光明も見えなかった。と、その瞬間、この謎をとく鍵を、ふと僕は握った。私は二つおきに読んでいった所、その手紙がトレヴォ氏を失望に追い込んだ理由がはっきり分かった。
それは短い簡単な警告文で、僕が友人に読んでやった次のようなものだった。
「計画はなされたり。ハドソンはすべてを予告せり。逃亡せられよ」
ヴクトウ・トレヴォは両手の中に顔を埋めた
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