たり顔に白波をぶっかけられたりするだけで、波の間を革舟を進めて行った。
 私は今や急速にスクーナー船に近づいていた。舵柄がばたんばたんと動く度にそれについている真鍮がぴかぴか光るのまでが見えた。それでも一人の姿も甲板には見えなかった。船は見棄てられたのだと想像しない訳にはゆかなかった。もしそうでなければ、あの連中は下で酔って寝ているのだ。それなら多分私は彼等を当木《あてぎ》で塞いでしまって、船を自分の思うままに出来るかも知れない。
 しばらくの間は船は私には何より困ることをしていた。――じっとしていることだ。船は正南へ向い、無論、始終針路がぐらぐらした。風下へ向く度毎に帆は幾分膨らみ、そうするとすぐにまた風の方へ向くのだ。これが私には何より困ることだと言う訳は、船は、帆布が大砲のようにばたばた鳴り、滑車《せみ》が甲板の上で転《ころ》がってがらがら音を立て、そういうどうにも出来ないような様子に見えながら、それでもなお、潮流の速さのためだけではなくて、当然にも大きいものである風圧を全部受けるために、やはり私から向うへ走り続けていたからである。
 しかし、ついに、いよいよ機会が来た。風がしば
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