四篇 柵壁

     第十六章 医師が続けた物語
           どうして船を棄てたか

 あの二艘のボートがヒスパニオーラ号から岸へ行ったのは、一時半――海語で言うと三点鐘(註五七)――頃であった。船長と、大地主と、私とは、船室《ケビン》でいろいろと相談をしていた。一陣の微風でもあったなら、吾々は船に残っている六人の謀叛人を襲い、錨索を放って、沖へ出たであろう。しかし風はなかったし、その上、どうにも仕方がなくなったことには、ハンターが降りて来て、ジム・ホーキンズがいつの間にかボートへ入り込んで皆と一緒に上陸してしまったと知らせてくれた。
 吾々はジム・ホーキンズを疑う気は少しも起らなかったが、彼が無事でいられるかと非常に心配になった。ああいう気の荒くなっている連中と一緒に行ったのでは、吾々が再びあの子を見られるかどうか見込は五分五分のように思われた。吾々は甲板へ駆け上った。瀝青《チャン》が板の接目《つぎめ》で泡立っていた。その場所に漂う気持の悪い悪臭が私の胸を悪くさせた。もし熱病や赤痢を嗅げる処があるとするなら、あの厭な碇泊所こそ正にそれであった。例の大人の悪党は前甲板の帆の
前へ 次へ
全412ページ中176ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
スティーブンソン ロバート・ルイス の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング