ね、――あの人とジョン・シルヴァーと。」
「シルヴァーはそう言いたければ言ってもいいさ。」と大地主さんが叫んだ。「が、あの我慢の出来んいかさま師のことなら、私は断言するが、あの男の振舞は男らしくない、海員らしくない、全然イギリス人らしくない、と思うよ。」
「まあ、今にわかるでしょう。」と医師が言った。
 私たちが甲板へ出て来た時には、水夫たちはもう、よいこら、よいこらと掛声をしながら、武器と火薬とを運び出しにかかっていて、船長とアローさんとがそばに立って監督していた。
 今度の配置はまったく私の気に入った。スクーナー船全部が検査された。中部船艙の後の部分であったところに、六箇の棚寝床《バース》が船尾に拵えてあった。そしてその一組の船室は左舷の側にある円材(註四一)の出ている廊下で厨室と前甲板下水夫部屋《フォークスル》とに続いているだけだった。初めは、船長と、アローさんと、ハンターと、ジョイスと、医師と、大地主さんとがこの六つの棚寝床を占めることにきまっていたのであった。ところが今度は、レッドルースと私とがその中の二つに入ることになり、アローさんと船長とが甲板の船室昇降口室《コムパニヨン》で寝ることになった。そこは両側とも拡げられていて、最上後甲板下船室《ラウンドハウス》と言ってもいいくらいであった。もちろん、やはり天井はごく低かった。が二つの吊床《ハンモック》を吊《つる》すだけの余地はあった。そして副船長でさえこの配置には喜んでいたようだった? 多分、彼でさえ乗組員には疑いを抱いていたのであろう。だがこれはただ推量である。というのは、後にわかるように、私たちは永くは彼の世話にならなかったのだから。
 私たちが皆一所懸命に働いて、火薬と棚寝床とを移していると、その時、船員の最後の一二人と、のっぽのジョンとが、艀《はしけ》でやって来た。
 料理番《コック》は猿のようにうまく舷側《ふなばた》を上って来て、やっていることを見るや否や、「おや、兄弟《きょうでえ》! これぁ何だい?」と言った。
「火薬の場所を変えてるんだよ、ジャック。」と一人が答えた。
「やれやれ、何てこった。」とのっぽのジョンが叫んだ。「そんなことをしていちゃあ、きっと明日《あす》の朝の潮時《しおどき》をはずしちまうぜ!」
「俺《わし》の命令さ!」と船長がぶっきらぼうに言った。「お前は下へ行くがいい。みんなが
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