大変に腹を立てましてね、旦那さま、それをまるで紙屑のように私に投げ返したのでございます、」とプールが答えた。
「これはたしかに博士の筆跡ではないか?」と弁護士が言葉を続けた。
「私もそうらしいと思いました、」と召使はすこしむっつりして言った。それから声の調子を変えて「けれども筆跡なぞ何でしょう?」と言った。「私はあの人を見たんですもの!」
「あの人を見たと?」アッタスン氏はきき返した。「それで?」
「それなんですよ!」とプールが言った。「それはこういう訳なのでございます。私は庭から階段講堂へいきなり入ったことがありました。すると、あの人がその薬かそれとも何かを探しにこっそり出て来ていたらしいのです、といいますのは、書斎のドアが開いていまして、あの人がその室のずっと向うの端で編みかごの間をしきりに探していたからで。私が入って参りますと顔を上げ、何か叫び声のような声を立てて、二階の書斎へ駆け込んでしまいました。私があの人を見たのはほんの一分間くらいのものでしたが、私はぞっとして髪の毛が頭に突っ立ちました。ねえ、旦那さま、もしあれが私の主人でしたなら、なぜ顔に覆面なんぞをしていたのでしょう?
前へ
次へ
全152ページ中76ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
スティーブンソン ロバート・ルイス の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング