通って大きな台所へ入った。そこには火は消えていて、甲虫が床《ゆか》の上に跳んでいた。
「旦那さま、」と彼はアッタスン氏の眼を見ながら言った。「あれが私の主人の声でしたでしょうか?」
「声がひどく変ったようだな、」と弁護士は真っ蒼になりながらも相手を見返して答えた。
「変ったですって? まあ、さよう、私もそう思います、」とその召使頭が言った。「二十年もあの方のお屋敷に奉公しておりながら、その御主人のお声を聞き違えるなんてことがございましょうか? いいや、旦那さま。御主人は殺されたんです。神さまの御名を呼んでわめいておられるのを私たちが聞きました八日前に、殺されたのでございます。御主人の代りに誰が[#「誰が」に傍点]あすこに入っているのか、またその者がなぜ[#「なぜ」に傍点]あすこに残っているのかということは、神さまに叫ぶような恐ろしいことなのですよ、アッタスンさま!」
「それはずいぶん妙な話だな、プール。それはむしろ突飛な話だよ、なあ、おまえ、」とアッタスン氏は指を噛みながら言った。「仮りにおまえの推測どおりだとしても、ジーキル博士がそのう――そうだ、殺されたとしてもだ、その殺害者が一た
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