表には「ヘンリー・ジーキル博士の死亡乃至は失踪まで開封せられざること、」と記されてあった。アッタスンは自分の眼を信ずることができなかった。そうだ、失踪とある。ここにもまた、彼がもうずっと前にその筆者に返してしまったあの気違いじみた遺言書のなかにあったように、失踪ということとヘンリー・ジーキルの名前とが結びつけられているのだ。しかし、あの遺言書では、その考えはハイドという男の陰険な入れ知恵から出ていたのであった。それは全く余りにも明白な怖ろしい目論《もくろみ》[#「目論《もくろみ》」はママ]をもってそこに※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]入されたのだ。ところが、ラニョンの字で書かれたとなると、それはどういうことを意味するのだろう? 禁止をやぶってすぐさまこの不思議なことの底まで探ってみたいという強い好奇心がおこった。しかし職業上の名誉と亡き友に対する信義とは、その被委託者にとって峻厳な義務であった。で、その包みは彼の私用金庫の一番奥にそのままにしておかれた。
好奇心を抑えることと、それに打ち勝つこととは、別のことである。その日からのち、アッタスンが
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