がございますので。その二つの手跡は多くの点で同一なんです。ただ字の傾斜が違っているだけで。」
「ちょいとおかしいな、」とアッタスンが言った。
「おっしゃる通り、ちょいとおかしいのです、」とゲストが答えた。
「僕はこの手紙のことは人には言いたくないのだからね、わかったね、」と主人が言った。
「はい。承知いたしました、」と事務員が言った。
そして、その夜アッタスン氏は自分一人になるとすぐに、その手紙を自分の金庫の中にしまいこみ、それから後はそこから出さなかった。「何ということだ!」と彼は考えた。「ヘンリー・ジーキルが殺人犯のために偽手紙を書くなんて!」そう思うと、彼の血は血管の中で冷たくなるような気がした。
ラニョン博士の変事
時が流れた。ダンヴァーズ卿の死は公衆に対する危害として世間の憤慨をかったので、数千ポンドの懸賞金がかけられた。しかしハイド氏は、まるで初めから存在しなかった人のように、警察の視界から消え失せてしまった。なるほど、彼の過去のことが大分明るみへ出された。そのどれもみな評判のよくないものであった。その男の冷酷で凶暴な残忍さのこと、その下劣な生活のこと、そ
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