度は、」と相手が言った。「どうしてあなたはわたしをご存じだったのです?」
「これこれこういう人だと聞いていたから、」という答えだった。
「誰から?」
「わたしたちには共通の友人がある、」とアッタスン氏が言った。
「共通の友人!」と少し嗄れ声でハイド氏がきき返した。「それは誰です?」
「例えば、ジーキル、」と弁護士が答えた。
「あの男がそんなことを言ったことなんかないですよ、」とハイド氏はかっと怒って叫んだ。「君が嘘をつこうとは思わなかった。」
「まあまあ、」とアッタスン氏が言った、「それはおだやかな言い方ではないね。」
相手は大きく唸ったが、それが獰猛な笑いになった。そして次の瞬間には、驚くべき速さで、戸口の錠をはずして、家の中へ姿を消してしまった。
弁護士は、ハイド氏にとり残されると、不安の化身のように、しばらく突っ立っていた。それからのろのろと街をのぼり始めたが[#「始めたが」は底本では「殆めたが」]、一二歩ごとに立ちどまり、途方に暮れている人のように額に手をあてた。彼が歩きながらこんなに考え込んでいる問題は、難題の部類に入る問題だった。ハイド氏は色が蒼くて小男だったし、どこと
前へ
次へ
全152ページ中26ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
スティーブンソン ロバート・ルイス の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング