、自分と死を共にしなければならないその人間が、完全に不具であることを、さとっていた。そして、この共同所有という絆《きずな》はそれだけでも彼の悩みのもっとも深刻なものであったが、そのほかに、彼はハイドを、生命力は強いにしても、どこか地獄の鬼のようなところばかりではなく、何となく無機物らしいところのあるものと、考えた。その地獄の粘土が叫んだり声を立てたりするように思われること、その定まった形のない土塊《つちくれ》が身振りをしたり罪を犯したりすること、死んだ無形のものが生命の働きをうばうということ、これはいかにも恐ろしいことであった。また、その反逆的な恐ろしいものが妻よりも身近に、眼よりもぴったりと彼に結びつけられて、彼の肉体のなかに閉じこめられ、そのなかでそれが呟くのが聞こえ、生まれ出ようともがいているのが感じられ、いつでも弱っている時や、安心して眠っている時には、彼にうち勝って、彼の生命を奪ってしまうということも、恐ろしいことであった。ハイドのジーキルに対する憎悪は、それとは違った種類のものであった。彼の絞首台への恐怖はいつも彼を駆りたてて一時的に自殺させ、一個の人間ではなくてジーキルの一部であるという従属的地位に返らせた。しかし、彼はそんなことをしなければならぬのを嫌い、ジーキルが近ごろ元気がなくなっているのを嫌い、自分自身が嫌われているのを怒った。そのために彼はよく私に猿のような悪戯をし、私の書物のページに私自身の手跡で涜神の文句をなぐり書きしたり、手紙を焼きすてたり、私の父の肖像画を破ったりした。そして実際、彼が死を恐れなかったなら、彼は私を巻きぞえにして死滅させるために、とっくに自殺をしていたであろう。しかし、彼の生に対する愛情は驚くほどのものであった。私はもう一歩進んで言おう。彼のことを思っただけでも胸が悪くなりぞっとする私でも、この卑劣で熱烈な愛着を思いだすとき、また自殺によって彼をきり放すことのできる私の力をどんなに彼が恐れているかを知るとき、彼をあわれむ気持が私の心のうちにおこるのであった。
このうえ長くこの記述を続けることは、無駄であるし、またその時間も全くない。ただ、これほどの苦しみを受けたものは、まだこれまでにだれ一人もない、というだけにしておこう。それでも、こういう苦しみにさえ、習慣が――決してそれを軽くしたわけではないが――一種の心の無感覚
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