ではねえ。此《こ》の胸《むね》に、機関《からくり》を知《し》つとります。」
「機関《からくり》か。」
「危険《けんのん》な機関《からくり》だで、小《ちひ》さく拵《こさ》へて、小児《こども》の玩弄《おもちや》にも成《な》りましねえ。が、親譲《おやゆづ》りの秘伝《ひでん》ものだ、はツはツはツ、」
と浮世《うきよ》を忘《わす》れた笑《わら》ひを行《や》る。
「お待《ま》ち、親譲《おやゆづ》りの秘伝《ひでん》と言《い》ふと……」
と言《い》ひ方《かた》は迫《せま》つたが、声《こゑ》の調子《てうし》は大分《だいぶ》静《しづ》まる。
「何《なに》も、家伝《かでん》の秘法《ひはふ》の言《い》ふて、勿体《もつたい》を附《つ》けるでねえがね……祖父《おんぢい》の代《だい》から為《し》た事《こと》を、見《み》やう見真似《みまね》に遣《や》るでがすよ。」
「其《それ》ぢや、三代《さんだい》船大工《ふなだいく》か。」
と些少《すこし》落着《おちつ》いて青年《わかもの》が聞《き》いた。
雪枝《ゆきえ》、菊松《きくまつ》
七
「何《なん》の、お前様《めえさま》、見《み》さ
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