常《じんじやう》な、婦《をんな》の人《ひと》ほどに見《み》えつけ。等身《とうしん》のお祖師様《そしさま》もござれば丈六《ぢやうろく》の弥陀仏《みだぶつ》も居《ゐ》さつしやる。――これ人形《にんぎやう》は、はい、玩具箱《おもちやばこ》ウ引転返《ひつくりかへ》した中《なか》からばかり出《で》るもんではねえで、其《そ》の、見事《みごと》なに不思議《ふしぎ》は無《な》いだが、心配《しんぱい》するな木彫《きぼり》だ、と言《い》はつしやる、……お前様《めえさま》が持《も》つて来《き》て、船《ふね》の中《なか》へ置《お》かしつたかな。」
「何《なに》、打棄《うつちや》つたんだ。」と青年《わかもの》は口惜《くや》しさうに言《い》つた。
「打棄《うつちや》らしつたえ、持重《もちおも》りが為《し》たゞかね。」
とけろりとして、目《め》を離《はな》れた白《しろ》い眉《まゆ》をふつさり揺《ゆす》る。
 青年《わかもの》はじり/\と寄《よ》つた。
「で、老爺《ぢい》さん、何《なに》か、君《きみ》は活《い》きた人間《にんげん》で無《な》いから安堵《あんど》したと言《い》つたね、今《いま》の船《ふね》には係合《かゝ
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