。
品物《しなもの》は佗《わび》しいが、なか/\の御手料理《おてれうり》、餓《う》えては居《ゐ》るし冥加《みやうが》至極《しごく》なお給仕《きふじ》、盆《ぼん》を膝《ひざ》に構《かま》へて其上《そのうへ》を肱《ひぢ》をついて、頬《ほゝ》を支《さゝ》えながら、嬉《うれ》しさうに見《み》て居《ゐ》たわ。
椽側《えんがは》に居《ゐ》た白痴《あはう》は誰《たれ》も取合《とりあ》はぬ徒然《つれ/″\》に堪《た》へられなくなつたものか、ぐた/\と膝行出《いざりだ》して、婦人《をんな》の傍《そば》へ其《そ》の便々《べん/\》たる腹《はら》を持《も》つて来《き》たが、崩《くづ》れたやうに胡座《あぐら》して、頻《しきり》に恁《か》う我《わし》が膳《ぜん》を視《なが》めて、指《ゆびさし》をした。
(うゝ/\、うゝ/\。)
(何《なん》でございますね、あとでお食《あが》んなさい、お客様《きやくさま》ぢやあゝりませんか。)
白痴《あはう》は情《なさけ》ない顔《かほ》をして口《くち》を曲《ゆが》めながら頭《かぶり》を掉《ふ》つた。
(厭《いや》? 仕様《しやう》がありませんね、それぢや御一所《ごいつしよ》
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