其時《そのとき》、頤《あぎと》の下《した》へ手《て》をかけて、片手《かたて》で持《も》つて居《ゐ》た単衣《ひとへ》をふわりと投《な》げて馬《うま》の目《め》を蔽《おほ》ふが否《いな》や、
兎《うさぎ》は躍《をど》つて、仰向《あふむ》けざまに身《み》を飜《ひるがへ》し、妖気《えうき》を籠《こ》めて朦朧《まうろう》とした月《つき》あかりに、前足《まへあし》の間《あひだ》に膚《はだ》が挟《はさま》つたと思《おも》ふと、衣《きぬ》を脱《はづ》して掻取《かいと》りながら下腹《したばら》を衝《つ》と潜《くゞ》つて横《よこ》に抜《ぬ》けて出《で》た。
親仁《おやぢ》は差心得《さしこゝろえ》たものと見《み》える、此《こ》の機《きツ》かけに手綱《たづな》を引《ひ》いたから、馬《うま》はすた/\と健脚《けんきやく》を山路《やまぢ》に上《あ》げた、しやん、しやんしやん、しやんしやん、しやんしやん、――見《み》る間《ま》に眼界《がんかい》を遠《とほ》ざかる。
婦人《をんな》は早《は》や衣服《きもの》を引《ひツ》かけて椽側《えんがは》へ入《はい》つて来《き》て、突然《いきなり》帯《おび》を取《と》らうと
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