ますよ。お生命《いのち》も冥加《みやうが》な位《くらゐ》、馬《うま》でも牛《うし》でも吸殺《すひころ》すのでございますもの。然《しか》し疼《うづ》くやうにお痒《かゆ》いのでござんせうね。)
(唯今《たゞいま》では最《も》う痛《いた》みますばかりになりました。)
(それでは恁麼《こんな》ものでこすりましては柔《やはらか》いお肌《はだ》が擦剥《すりむ》けませう、)といふと手《て》が綿《わた》のやうに障《さは》つた。
それから両方《りようはう》の肩《かた》から、背《せな》、横腹《よこばら》、臀《いしき》、さら/\水《みづ》をかけてはさすつてくれる。
それがさ、骨《ほね》に通《とほ》つて冷《つめた》いかといふと然《さ》うではなかつた。暑《あつ》い時分《じぶん》ぢやが、理屈《りくつ》をいふと恁《か》うではあるまい、私《わし》の血《ち》が湧《わ》いたせいか、婦人《をんな》の温気《ぬくみ》か、手《て》で洗《あら》つてくれる水《みづ》が可《いゝ》工合《ぐあひ》に身《み》に染《し》みる、尤《もツと》も質《たち》の佳《い》い水《みづ》は柔《やはらか》ぢやさうな。
其《そ》の心地《こゝち》の得《え》も
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