すさま》じく岩《いは》に砕《くだ》ける響《ひゞき》がする。
向《むか》ふ岸《ぎし》は又《また》一|坐《ざ》の山《やま》の裾《すそ》で、頂《いたゞき》の方《はう》は真暗《まつくら》だが、山《やま》の端《は》から其《その》山腹《さんぷく》を射《い》る月《つき》の光《ひかり》に照《て》らし出《だ》された辺《あたり》からは大石《おほいし》小石《こいし》、栄螺《さゞえ》のやうなの、六|尺角《しやくかく》に切出《きりだ》したの、剣《つるぎ》のやうなのやら鞠《まり》の形《かたち》をしたのやら、目《め》の届《とゞ》く限《かぎ》り不残《のこらず》岩《いは》で、次第《しだい》に大《おほき》く水《みづ》に浸《ひた》つたのは唯《ただ》小山《こやま》のやう。」
第十四
「(可《いゝ》塩梅《あんばい》に今日《けふ》は水《みづ》がふへて居《を》りますから、中《なか》に入《はい》りませんでも此上《このうへ》で可《よ》うございます。)と甲《かう》を浸《ひた》して爪先《つまさき》を屈《かゞ》めながら、雪《ゆき》のやうな素足《すあし》で石《いし》の盤《ばん》の上《うへ》に立《た》つて居《ゐ》た。
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