人《をんな》は言下《ごんか》に打解《うちと》けて、
(さあ/\汚《きたな》うございますが早《はや》く此方《こちら》へ、お寛《くつろ》ぎなさいまし、然《さ》うしてお洗足《せんそく》を上《あ》げませうかえ。)
(いえ、其《それ》には及《およ》びませぬ、雑巾《ざうきん》をお貸《か》し下《くだ》さいまし。あゝ、それからもし其《そ》のお雑巾《ざうきん》次手《ついで》にづツぷりお絞《しぼ》んなすつて下《くだ》さると助《たすか》ります、途中《とちう》で大変《たいへん》な目《め》に逢《あ》ひましたので体《からだ》を打棄《うつちや》りたいほど気味《きみ》が悪《わる》うございますので、一ツ背中《せなか》を拭《ふ》かうと存《ぞん》じますが恐入《おそれい》りますな。)
(然《さ》う、汗《あせ》におなりなさいました、嘸《さ》ぞまあ、お暑《あつ》うござんしたでせう、お待《ま》ちなさいまし、旅籠《はたご》へお着《つ》き遊《あそ》ばして湯《ゆ》にお入《はい》りなさいますのが、旅《たび》するお方《かた》には何《なに》より御馳走《ごちそう》だと申《まを》しますね、湯《ゆ》どころか、お茶《ちや》さへ碌《ろく》におもてなしも
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