といつてやう/\取《と》れる暫時《しばらく》も耐《たま》つたものではない、突然《とつぜん》取《と》つて大地《だいぢ》へ叩《たゝ》きつけると、これほどの奴等《やつら》が何万《なんまん》となく巣《す》をくつて我《わが》ものにして居《ゐ》やうといふ処《ところ》、予《かね》て其《そ》の用意《ようい》はして居《ゐ》ると思《おも》はれるばかり、日《ひ》のあたらぬ森《もり》の中《なか》の土《つち》は柔《やはらか》い、潰《つぶ》れさうにもないのぢや。
 と最早《もは》や頷《えり》のあたりがむづ/\して来《き》た、平手《ひらて》で扱《こい》て見《み》ると横撫《よこなで》に蛭《ひる》の背《せな》をぬる/\とすべるといふ、やあ、乳《ちゝ》の下《した》へ潜《ひそ》んで帯《おび》の間《あひだ》にも一|疋《ぴき》、蒼《あを》くなつてそツと見《み》ると肩《かた》の上《うへ》にも一|筋《すぢ》。
 思《おも》はず飛上《とびあが》つて総身《そうしん》を震《ふる》ひながら此《こ》の大枝《おほえだ》の下《した》を一|散《さん》にかけぬけて、走《はし》りながら先《まづ》心覚《こゝろおぼえ》の奴《やつ》だけは夢中《むちう》でも
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