な先覚者がこの機運の順当な開展のために最善の指導を与えようと努力される必要があるのではないでしょうか。
 平塚さんは、私の主張の中に独身者の増加の予想されることを婦人自身の不幸、国家の大損失だといわれましたが、現在のように、経済的に無力な大多数の女子が、それらのことを殆ど顧慮しないで同栖《どうせい》を急いでしまう軽率放縦な結婚が、媒妁結婚にせよ、恋愛結婚にせよ、どれだけ婦人自身は勿論、良人及び子供の不幸となり、それから生じる種々の道徳上及び物質上の欠陥がどれだけ社会の迷惑となり損失となっていることでしょう。平塚さんは此方の不幸と損失とを独身者の一時的増加に由る損失よりは小《ちいさ》いものとして、この経済的に無力な女子の軽率放縦な結婚をこのままに肯定し、かつ持続させて置こうとされるのでしょうか。
 私たちは現在の女子が経済上の方面にも一つの自覚を起して、労働を常則として独立する積極的の実行に取掛り、これに由って現在及び将来の不幸から自ら解き放つことを主張するものですが、もし平塚さんのように、私たちの主張を拒まれるとすれば、現状のままに放置された無理想、無解決の大多数の女子は、益※[#二の
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