婦たちの食糧運動を評された文中に「思うに漁村の女子は、生れ落ちると怒濤《どとう》の声を聞き、山なす激浪を眺め、長ずれば梶《かじ》も取り櫓《ろ》も漕ぎ、あるいは深海に飛込んで魚貝を漁《あさ》って生活しているので、自《おのずか》ら意志が強固になり、独立自存の気象に富んでいる。海浜または島嶼《とうしょ》に住んでいる女子が男|勝《まさ》りに気概があり、権力が強く、女子の社会的地位の高いのは一般的である。これらの漁村に住む女子は経済的独立の思想が発達しているから、家庭生活に対する困苦と責任とを実感する程度が強い。家庭の経済的責任を男子に委ねて、その従属者として生活しているのでなくて、女子もこれに加《くわわ》り、相本位的に独立の主体として解釈している結果である」とある一節を引いて、社会の一部には既存の事実であることを証明して置きます。なお、農家と商工業界との女子にも、今日の努力の程度で許される経済的独立の実例は決して寡《すくな》くありません。
 日本の工場労働者の約六割までが婦人であり、それらの婦人労働者の総数が六十三万六千余人であるのを見ても、それら下層階級の婦人が必要の前に如何に労働を回避しな
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