しからざるものは経済学上の富に非《あら》ずと為す」といわれ、この理由から、人間の労力もその中の或種のものに至っては、生産はともかく、少くもその分配は或程度まで人為を以て左右し得られる結果、経済学上、殊に分配論上の対象となっていることを述べられた中に、家庭外の婦人の労働が経済学上の重大なる問題の一つとなっているに反し、母としての婦人の家庭内における労働は経済上の問題となる性質のものでなく、良妻賢母の「分配」などは今日|真面目《まじめ》な問題となしがたいといわれております。私は山川さんが、「家庭における婦人の労働は、畢竟《ひっきょう》不払労働でなくて何であろうか」と憤慨されたのは、如何なる労働も凡て経済的価値に換算し得るものだと誤解されているからだと思います。
 非常に紙数を超過しました。あとは略して置きます。(一九一八年九月)
[#地より1字上げ](『太陽』一九一八年一一月)  



底本:「与謝野晶子評論集」岩波文庫、岩波書店
   1985(昭和60)年8月16日初版発行
   1994(平成6年)年6月6日10刷発行
底本の親本:「心頭雑草」天佑社
   1919(大正8)年1月初版発行
入力:Nana ohbe
校正:門田裕志
2002年5月14日作成
2003年5月18日修正
青空文庫ファイル:
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