中学部の女学生に対する教育は、女子を以上の意味の完全な個人にまで導く基礎教育を施すのですから、女性という性別に由って、教育の質と種類とを男子の中学生より低下しもしくは削減しようとは思いません。これまでの良妻賢母主義の教育は、人間を殺して女性を誇大視し、男子の隷属者たるに適するように、わざと低能扱いの教育を施していました。私たちは男子と同等に思想し、同等に活動し得る女子を作る必要から、女性としての省慮をその正当な程度にまで引き下げ、大概の事は人間として考える自主独立の意識を自覚せしめようと思います。これが私たちの学校で、従来の高等女学校の課程に依《よ》らずに、特に中学部女生徒と呼ぶ所以《ゆえん》です。

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 中学部の課程は、修養部と創作部とに大別します。修養部においては、男子の現在の中学全部の学科を適度に取捨して、これを四年間に修めさせようと思います。これは従来の教育法に対して最も英断な斧鉞《ふえつ》を加えようとするものです。量を減じながら、質においては一層深化させて行くつもりです。この試錬が担任の教授たちの霊活な手腕を要することは言うまでもありません。
 修養
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