部の課程は、精神講座、数学、自然科学、人文科学、日本文学、外国語、外国文学等に大別します。中に外国語は英仏両語を課し、日本文学と外国文学とでは、現代文学の外に古典をも課します。数学科で理学博士|寺田寅彦《てらだとらひこ》先生の御意見に由って第一年級より代数を教えるというような特殊の新教育法を他の諸科においても断行致します。
 創作部の課程は、文学、絵画、西洋音楽、西洋舞踊、図案、手芸等に大別し、いずれもそれらの基礎教育を施すと共に、個性的な自由製作を激励しようと思います。

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 以上の課程は、いずれも学生が一通り聴講せねばならないということにおいて必修科目のようですが、従来のような各科にわたる試験をしませんから、試験のために勉強することがなくなれば、いずれの学科の聴講も苦痛にはなるまいと思います。進級のためには、学生があらかじめ自己の興味のある学科を修養部と創作部とにおいて四種だけ随意に選択して置いて、その課目について試験を受けるという制度にしたいと思います。学生は特に一能一芸に秀《すぐ》れてさえおれば、他の学科は聴講しただけで立派に進級させるつもりです。大学部になれば、音楽の好きな者はピアノにばかり向い、自然科学の好きな者は実験室にばかり閉じ籠り、絵の好きな者は絵ばかり描いているという風であっても好いと思います。

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 一週間の授業時間は最大限三十五時間です。外国語と絵画と音楽の時間が多いので、土曜日を除けば一日六時間になります。時間が多く、また学課の自由選択が出来、創作科を初め、知らず識らず興味に引かされて自発的に修める学科ばかりですから、決して学生の重い負担にはなるまいと確信します。
 精神講座にも、科外の臨時講演にも、幾多の学界、芸術界、実際社会等の実力ある識者が講師として、いろいろの専門的知識の講話と経験談とをして下さることも、この学校の一つの特色にしたいと考えています。
 学生の数に制限がありますから、教師と学生の間に家族的の親しさを持ち合うことも出来、また個別的の指導がかなりよく行届くであろうと考えます。

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 将来私たちの文化学院から如何なる女子を出すであろうかといえば、中学部を卒業してそれで止めるにせよ、進んで大学部を卒業するにせよ、個人として、何かきっと、一つの創造的な長所を持っていて、功利的
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