ぬ》じりの家は夕日するかな
くれなゐの牡丹おちたる玉盤《ぎよくばん》のひびきに覚めぬ胡蝶と皇后《きさい》
丸木橋おりてゆけなと野がへりの馬に乗る子にものいひにけり
さざなみにゆふだち雲の山のぼる影して暮れぬみづうみの上
草に寝てひるがほ摘みて牧の子がほとゝぎす聴くみちのくの夏
みじろがず一縷《いちる》の香ぞ黒髪のすそに這《は》ふなれ秋の夜の人
春の山|比叡《ひえ》先達《せんだつ》は桐紋《きりもん》の講社《かうじや》肩衣《かたぎぬ》したる伯父かな
君を思ひ昼も夢見ぬ天日《てんじつ》の焔のごとき五月《さつき》の森に
船の灯や水蘆むらにわかれては海となりたる川口の島
大駿河《おほするが》裾野の家に垂氷《たるひ》する冬きにけらし山は真白き
夕舟やわがまろうどの黒髪にうす月さしぬしら蓮の水
とつぎ来ぬかの天上の星斗《せいと》よりたかだか君を讃《さん》ぜむために
花に寝て夢おほく見るわかうどの君は軍《いくさ》に死ににけるかな(禰津少尉の旅順二〇三高地の役《えき》に歿しけるに)
みづからの若さに酔へる痴人《しれびと》は羽ある馬に載せて逐《お》へかし
おん方の妻と名よびてわ
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