やすきひと時のあらば思はむ法《のり》の母上
載せてくる玉うつくしき声あると夏の日すみぬわれ水下《みづしも》に
山かげを出しや五人がむらさきの日傘あけたる船のうへかな
春の夜の夢のみたまとわが魂《たま》と逢ふ家らしき野のひとつ家
傘ふかうさして君ゆくをちかたはうすむらさきにつつじ花さく
わが知らぬ花も咲かむと雑草に春雨まてる隠者《ゐんじや》ぶりかな
大机|重陽《ちようやう》すぎの父の日をしら菊さして歌かきて居ぬ
円山や毛氈《まうせん》しきてほととぎす待つと侍《はべ》りぬ十四と十五
釣鐘にむら雨ふりぬ黒谷《くろだに》やぬるでばやしの紅葉のなかに
あづまやの水は闇ゆくおとながらひけば柱にほのしろき藤
御社《みやしろ》の尾白の馬の今日も猶《なほ》痩せず豆|食《は》む故郷《ふるさと》を見ぬ
戸に隠れわと啼く声の能《よ》う化けし狐と誉めぬ春の夜の家
舞ごろも祇園の君と春の夜や自主権現に絵馬うたす人
くれなゐの綾《りよう》の袴《はかま》の腰結《こしゆひ》のあたりに歌は書かむと思へ
美くしき御足のあとに貝よせてやさしき風よ海より来るか
いつの世かまたは相見む知らねどもただ
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