巴里の獨立祭
與謝野晶子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)平生《ふだん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「井に濁点」、564−16]クトル
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七月十三日の晩、自分は獨立祭の宵祭の街の賑はひを見て歸つて、子供の時、お祭の前の夜の嬉しかつたのと殆ど同じほどの思ひで、明日着て出る服や帽を長椅子の上に揃へて寢た。夜中に二三度雨が降つて居ないかと聞耳を立てもした。けれど、それは日本の習慣が自分にあるからで、高い處に寢て居る身には、雨が地を打つ音などは聞えやうが無い。マロニエの梢を渡る風がそれかと思はれるやうな事がままあるくらゐである。そんなに思つて居ながら、夜更かしをしたあとなので、矢張朝が起きにくい。それに、此處は四時前にすつかり空が明るくなつてしまふ。神經質の自分には、到底安眠が續けられないので、眠い思ひをしながら何時も起き上るのである。顏を洗つて髮を結つた時、女中のマリイがパンとシヨコラアを運んで來た。まだ八時前で、平生《ふだん》よりも
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