。併し大概わかつて居て下さるでせう。私は私の弱い方面を奥様に見せ度くありませんでした。何かの時には尤も冷静、沈着に処理して行くことの出来る男だと思つて居て下さい。私は確かにさう云ふ方面をも持つて居ます。[#「。」は底本では脱落]リヒヤルド、デエメルが斯う云つて居ます。[#「。」は底本では脱落]「されども恋は  〔Tru:be〕 なり」〔Tru:be〕 とは曇ると云ふ意味とうら悲しいと云ふ意味をも持つて居ます。私はそれに「永久に」と附加して置き度い。併し貴女は強い人でせう。
こんな手紙を書いても決して奥様を慰められやうとは思ひません。言葉ではないです。併し私の心でも今のあなたの心を慰められないでせう。時をたのむより仕方が無いでせう。
[#ここで字下げ終わり]
むつかしい事の書いてある処よりも友染と云ふ字のある処を何度もわたしは見た。良人の留守に来た郵便物は読んだ手紙も一緒に柳行李の小いのにしまつて置いて、帰つた時に見せるのが今迄の習はしであつたのであるが、今度はそんなことも出来ないと思ひながら、入用の物、返事の入る物、歌の詠草などと撰り分けて処理するのが何とも云ひやうのない重くるしい仕事
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