終わり]
伊太利亜にてと云ふ端書きがある。伊太利亜を私は見ないのであるが、作者の歌つた所は南方の伊太利亜で、柔い岬の山が地中海に伸びて終らうとする所に白いシヤトウが立つてゐて、山の線を止めた形に見えたやうである。
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我れも行く春の銀座の灯のもとを巴里の宵の人中《ひとなか》として
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銀座の春の灯が連つた所を自分も行く。然《しか》し此処へ集つて来る他の人達と心もちに於て少し異つてゐるのである。自分の足は現在を享楽して運ぶ歩でなく過去を追つて居るのである。巴里の夜のグランブルバアルの人波を分けて行く味《あじは》ひを是れから得ようとして居ると云ふのである。
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ここにして夜毎に逢《あ》ふと語る時銀座通を新居格《にゐかく》の行く
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此の頁に並んでゐるのは何れも軽い調子の歌である。銀座の夜に三四人が然《し》か語つて居る時に、噂の主の新居格氏が前の舗道を通つて行つた。
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カフエエより扇形して春の夜の銀座の雪を照らすともし火
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