現し足りないとは思はない。裸男の大勢の力が集められて居ても大海や空に比べては小さいものであらうから。
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木立みな十字にとがり太陽も十字に光る冬枯の上
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どの木も十字に見え、それに射《さ》す太陽の光も十字の形に落ちて来るとより見えない、寂しい冬枯の日の園の景色。
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象の背の菩薩の如く群青《ぐんじやう》と白の絵の具の古び行く秋
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象の背に乗つて居る普賢《ふげん》菩薩の古い仏画のやうに、秋は白であつて群青色であつて、そして日日その仏画のやうに古く錆びが附て行くと云ふのであつて、作者が思つて居る普賢の像の著衣は青色の鉱物性の顔料で描かれたものであつて、顔には厚く胡粉が重ねられてあるのであらう。其れのみならず初めから灰色を塗られた象の姿も作者の目に映つて居る筈《はず》である。更け行く秋を作者はこんな風に見た。
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一切に背を向けながら入る如き甘さを感ず劇場の口
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芝居の入口に達した時の心もちに、是れで一時的にもせよ世間と
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