て出来たものらしい。花も矢車草であつたであらう。或ひは白いマアガレツトかも知れない。かざすと云ふ言葉は男が洋服の胸へさしたこともかう云つてよいのである。二人で同じ花を胸にさして若い日は去り易い、其れを知つて居る我等は燃ゆる火を内に抱いて相寄つて居るのではないか、罪であつても何であつても仕方が無いと話し合つたと云ふのである。歎くと云ふのは二人の恋の底に不安があるからである。其の場面には花園用の萠葱色のベンチがなくてはならない。
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花園《はなぞの》を隣にもてるここちしぬ匂へる君をいと近く見て
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 百花爛漫と咲いた花園の意味では恐らく無いであらうと思はれる。めざましい眩《まばゆ》い花園ではなく、人が一寸《ちよつと》主人に羨望の念を抱く程度の美くしい花園を隣にして住む家に居るやうな幸福感を自分は与へられて居る。其れはこの麗人と膝を並べて坐してゐるからであると云ふのである。
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向日葵《ひまはり》を一輪活けて幸ひのうちあふれたる青玉《せいぎよく》の壺
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 青玉の壺へ向日葵を一輪活けて
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