自覚は永久に与へて欲しくない。何時までもこの空想を捨てたくないと云ふことが云はれてゐるのであつて、恋の歌と解釈が出来ないではないが、作者の比較的後年の作であるから、その外のことと見る方が妥当なやうに私は思ふ。
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おほかたの目に見えざれば人知らじ心に祈り血を流せども
[#ここで字下げ終わり]
 是れも恋歌めいては居るがさうではないと私には思はれる。普通の目で見ては自分ものんきな者に見えるであらう、芸術の道の精進の為めに心には血を流すほどの苦しみをして居るのであるがと解すべきである。



底本:「冬柏」新詩社
   1935(昭和10)年6月号
   1935(昭和10)年7月号
   1935(昭和10)年9月号
   1935(昭和10)年10月号
   1935(昭和10)年12月号
   1936(昭和11)年2月号
※掲載誌に重複して記載されて居る表題「註釈與謝野寛全集(通し番号) 晶子」は、省略しました。
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の旧字を新字にあらためました。固有名詞も原則として例外とはしませんでしたが、人名のみは底本のままとしました。
※底本で「灯」と混在している「燈」は、新字に書き替えませんでした。
※底本は、以下に振り仮名(ルビ)をふっています。
尺度《ものさし》、家鴨《あひる》、裸《はだか》、木花咲耶姫《このはなさくやひめ》、乾漆《かんしつ》、木彫《もくてう》、料《れう》、遠方《をちかた》、吾子《あこ》、穀倉《こくぐら》、種子《たね》、半切《はんせつ》、沈黙《ちんもく》、屋後切《やじりきり》、金《きん》、額《ぬか》、書《ふみ》、走《わ》しりくる、縁《ふち》、拳《けん》、波斯《ペルシヤ》
加えてこのファイルでは、読みにくい、もしくは、読み誤りやすいと判断した言葉に、ルビを補いました。短歌へのルビ付けにあたっては、「與謝野寛短歌全集」明治書院、1933(昭和8)年 2月を参照しました。
入力:武田秀男
校正:土屋隆
2005年3月16日作成
青空文庫作成ファイル:
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