吹いて居る。其れが東洋にも波及しようとして居る。自分は平生戦争を忌はしく思つて居る一人であるけれど、今度の戦争は之が最後の戦争となる程敵も味方も手疵を負つて、世界を震慄させ、目を覚させて、野蛮な武力の競争を永遠に廃絶する土台となる為に、一時出来るだけ大戦争の開かれることを望んで居る。今日の新聞にある電報では独逸の大軍が仏蘭西と白耳義の国境へ集中され、カイゼル自身が国境戦の声援に出馬したやうである。リエイジュの一敗位に懲りる様な独逸ではないから、英仏の連合軍を相手に激しい大会戦が行はれるであらう。新聞の予測のやうに仏軍が必ず強いとも限らないから、互に一勝一敗は免れまい、一度に運命の決することは無いであらう。
良人も自分も仏蘭西贔負であるから、仏蘭西が戦争に対して上下とも整然たる秩序を保つて居ると云ふ電報を読んだ時は嬉しかつた。それから少時《しばらく》良人と巴里の今日此頃をいろいろ想像して話し合つた。オラル・ド・井ロンの製作室で、ロダン翁は平気でモデルを相手に下図《デッサン》を試みて居るであらう。詩人※[#濁点付き片仮名ヱ、1−7−84]ルアラン翁はサン・クルウの家で新詩集「高き焔」の
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